労働災害(労災)とは?

労働災害とは、労働者が業務に起因した事故によって亡くなったり、被った負傷、疾病、障害等です。
法律においては、労働災害について「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。」と定義されています。
労災保険とは?
労災保険は、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく保険制度で、業務災害または通勤災害によって、労働者が不幸にもお亡くなりになった場合に家族の生活等を補償するために給付を行う保険のことです。
労働者を一人でも使用する事業主は、一部の例外を除き、法人・個人事業主の区別なく労災保険に加入する義務があります。
仕事中や通勤中に死傷した場合、労災保険を請求することにより給付を受けることができる可能性があります。
死亡事故で遺族に支払われる補償
労働災害により大切なご家族が亡くなってしまった場合、ご遺族の方は労災保険から次のような補償を受けることができます。
- 遺族(補償)年金
- 遺族(補償)一時金
- 遺族(補償)年金前払い一時金
- 葬祭料(葬祭給付)
- 労災就学等援護費
これらの補償は自動的に支払われるものではなく、ご遺族が労働基準監督署に請求手続きを行う必要があります。
では、それぞれの給付内容を詳しく見ていきましょう。
遺族(補償)年金
遺族(補償)年金は、労働災害により亡くなられた方の収入によって生活していたご遺族の方の、その後の生活を支えることを目的とした補償です。
支給要件
遺族(補償)年金を受け取ることができる資格のある遺族と認められるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 被災労働者が死亡した当時その収入によって生計を維持していたこと(生計維持関係)
- 被災労働者の配偶者・子・父母・孫・祖父母または兄妹姉妹であること
- (妻以外の遺族については)年齢要件を満たしていること
① 被災労働者が死亡した当時その収入によって生計を維持していたこと(生計維持関係)
遺族が被災労働者と同居していた場合、基本的に生計維持関係が認められます。住民票など書類上の記載ではなく、実際に同居の実態があったことが必要となります。
同居していなくとも、遺族と被災労働者の間で生活費等の援助が行われていた等の事情があれば、生計維持関係が認められる場合があります。
また、被災労働者の収入によって生計を維持していた場合だけでなく、被災労働者の収入によって生計の一部を維持していた、いわゆる「共稼ぎ」の場合もこれに含まれます。
② 被災労働者の配偶者・子・父母・孫・祖父母または兄妹姉妹であること
遺族(補償)年金を受け取るためには、被災労働者の配偶者・子・父母・孫・祖父母または兄妹姉妹であるなど一定の家族関係にあることが必要です。
③ (妻以外の遺族については)年齢要件を満たしていること
妻以外の遺族については、一定の年齢要件があります。たとえば、次のような要件です。
- 60歳以上
- 18歳に達する日の以後の最初の3月31日までの間
受給資格者が複数いる場合の順位
受給資格者が複数いる場合、次の順番で優先順位が決まります。
| 優先順位 | 家族関係 |
|---|---|
| 1 | ・妻 ・60歳以上の夫 |
| 2 | 子(ただし18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間) |
| 3 | 父母(ただし60歳以上) |
| 4 | 孫(ただし18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間) |
| 5 | 祖父母(ただし60 歳以上) |
| 6 | 兄弟姉妹(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間、または60歳以上) |
| 7 | 夫(ただし55歳以上60歳未満) |
| 8 | 父母(ただし55歳以上60歳未満) |
| 9 | 祖父母(ただし55歳以上60歳未満) |
| 10 | 兄弟姉妹(ただし55歳以上60歳未満) |
- 一定の障害状態にある場合は優先権があることがあります。
- 55歳以上60歳未満の夫・父母・祖父母・兄弟姉妹は、受給権者となっても、60歳になるまでは年金の支給は停止されます。これを「若年停止」といいます。
支給内容
受給権者に対し、遺族の数に応じて、給付基礎日額を元にした金額が毎年支給されます。
| 遺族の人数 | 支給となる給付基礎日額の日数 |
|---|---|
| 1人 | 153日分 |
| 2人 | 201日分 |
| 3人 | 223日分 |
| 4人以上 | 245日分 |
- 給付基礎日額とは、事故前3か月間に支払われた賃金総額を日数で割った1日あたりの賃金額のことです。
- 受給権者に対し遺族の数に応じて遺族特別年金が支給されます。
- 遺族の数に関係なく一時金として遺族特別支給金300万円が支給されます。
- 遺族の1人、かつ、55歳以上の妻または一定の障害状態の妻の場合、支給日数は153日分ではなく175日分となります。
遺族(補償)一時金
労働者の死亡当時、遺族(補償)年金を受け取れる資格のある遺族が一人もいなかった場合、遺族(補償)一時金が支払われます。
受給権者の順位
遺族(補償)一時金の受給資格のある遺族のうち、もっとも順位が高い者に支給されます。
| 順位 | 家族関係 |
|---|---|
| 1 | 配偶者 |
| 2 | 労働者の死亡当時、その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母 |
| 3 | その他の子・父母・孫・祖父母 |
| 4 | 兄弟姉妹 |
受給権者の支給内容
給付基礎日額の1000日分が支給されます。
さらに、次のような支給のルールがあります。
- 算定基礎日額(ボーナス等の特別支給から算定)1000日分となる遺族特別一時金
- 300万円の遺族特別支給金
失権の場合
失権とは、受給権者が死亡したり婚姻したりしたために年金の受給権者でなくなることです。
遺族(補償)年金の受給権者が全員失権し、それまでに支払われた年金と前払い一時金の合計額が、給付基礎日額の1000日分に満たない場合にも、遺族(補償)一時金は支払われます。
遺族(補償)年金前払い一時金
遺族(補償)年金の受給権者が、葬儀費用や当面の生活費などまとまった資金が必要な場合に、1回に限り年金の前払いを受けることができる制度です。
前払い一時金の額は、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分から選択します。
葬祭料(葬祭給付)
被災労働者が亡くなり、葬儀を行った場合に、葬儀費用を補うために支給される給付です。次の金額を比較して高い額が支給されます。
- 31万5000円に給付基礎日額30日分を加えた金額
- 給付基礎日額の60日分
支給を受けることができるのは、原則として被災労働者の遺族です。ただし、遺族が葬儀を執り行わないことが明らかな場合で、事業主や友人が葬儀を行った場合には、支給を受けることができる場合があります。
労災就学等援護費
労働災害によって亡くなった方のご遺族が学校に通っていて、学費の支払いが困難と認められた場合に支給される制度です。
遺族(補償)年金受給権者またはその子が、在学している学校の種類(中学、高校、大学など)に応じて、月額で定められた金額が支給されます。
死亡事故で労災保険から支払われない金銭
死亡事故が発生した場合、遺族(補償)年金等が支給されますが、ご遺族に発生した損害を全てカバーするものではありません。特に、①慰謝料と②逸失利益に注意が必要です。
① 慰謝料
被災労働者本人、そして大切な家族を失った遺族が労災事故によって被った精神的苦痛に対する賠償である慰謝料は、労災保険からの給付に含まれません。
慰謝料は、労災事故について会社に安全配慮義務違反等の法的責任(過失)がある場合に、会社に対して損害賠償請求をすることなります。
死亡事故における慰謝料は、以下の目安が示されています。ただし、具体的な事由により増減します。
| 区分 | 慰謝料の目安 |
|---|---|
| 一家の支柱 | 2800万円 |
| 母親・配偶者 | 2500万円 |
| その他 | 2000万円~2500万円 |
② 逸失利益
逸失利益とは、生きていれば将来得られたはずの収入のことです。遺族(補償)年金は逸失利益の一部を補填するものですが、多くの場合逸失利益の全額をカバーすることはできません。
労災保険ではカバーしきれない逸失利益についても、慰謝料と同様に、会社に安全配慮義務違反等の法的責任(過失)がある場合に、会社に対して損害賠償請求をすることとなります。
請求手続きの流れ
労働災害により大切なご家族が亡くなってしまった場合、ご遺族が労災保険から補償を受けるための流れは次のとおりです。
- 労災の事故の発生
- 会社への報告
- 必要書類の準備
- 労働基準監督署に提出
- 労働基準監督署による調査
- 支給(不支給)の決定
所轄の労働基準監督署長に、遺族補償年金・複数事業労働者遺族年金支給請求書(様式第12号)を提出します。通勤災害の場合には、遺族年金支給請求書(様式第16号の8)を提出します。また、次のような書類を添付する必要があります。
- 死亡診断書、死体検案書、検視調書またはそれらの記載事項証明書など、被災労働者の死亡の事実及び死亡の年月日を証明することができる書類
- 戸籍の謄本、抄本など、請求人および他の受給資格者と被災労働者との身分関係を証明することができる書類
- 請求人および他の受給資格者が被災労働者の収入によって生計を維持していたことを証明することができる書類
- (個別事案によっては)被災労働者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった事実を証明する書類

よくあるご質問
請求に時効はありますか?
遺族(補償)年金等は、被災労働者が亡くなった日の翌日から5年経過すると、時効により請求権が消滅します。請求権を消滅させないために、早めにご相談をいただくことが必要です。
葬祭料(葬祭給付)は、被災労働者が亡くなった日の翌日から2年経過すると時効によって請求権が消滅します。遺族(補償)年金等の時効よりも期限が短いため注意が必要です。
どのような場合に会社への損害賠償が認められますか?
労災保険とは別に、会社に対して損害賠償を請求できるのは、会社側に債務不履行責任(安全配慮義務違反)、または不法行為責任(使用者責任)が認められる場合です。
債務不履行責任(安全配慮義務違反)
会社は、労働契約に基づき、労働者が安全に労働できるよう必要な配慮をする義務を負っています。これを「安全配慮義務」といいます。
安全配慮義務を怠った結果として労働災害が発生した場合、会社は債務不履行として損害賠償責任を負います。たとえば、次のような場合は会社が責任を負うことが多いでしょう。
- 危険な機械に安全装置を用意していなかった。
- 高所作業にもかかわらず、安全帯の使用を徹底させていなかった。
- 有毒な化学物質を扱うのに、適切な換気設備や防護マスクを用意していなかった。
- 十分な安全教育や訓練を行わずに危険な作業に従事させた。
不法行為責任(使用者責任)
他の従業員の過失によって労働災害が発生した場合、会社は従業員を雇用する使用者として損害賠償責任を負います。これを使用者責任といいます。たとえば、次のような場合は会社が責任を負うことが多いでしょう。
- 同僚が運転する車の運転ミスにより、轢かれて死亡した。
- 同僚の機械の操作ミスにより、挟まれて死亡した。
交通事故なら相手の自動車保険と労災保険のどちらを使いますか?
通勤中や業務中に交通事故で亡くなった場合、遺族は労災保険と加害者が加入している自動車保険の両方に請求できます。ただし、同じ損害項目について重複して補償を受けることはできません。どちらかから給付を受ければ、もう一方からは給付を受け取れないという調整(損益相殺)が行われます。
では、どちらを使うべきでしょうか?これはケースバイケースとなります。
交通事故で被害者に過失がない場合は、自動車保険を使うことが多いです。
しかし、交通事故に大きな過失が発生してしまう場合、まず労災保険から給付を受け、労災保険ではカバーされない慰謝料や逸失利益について保険会社と示談交渉を行うのが望ましいことがあります。過失相殺・費目拘束・特別支給金の点から労災保険が有利なことが多いためです。
労災保険には過失相殺がないこと
自動車保険では、過失割合に応じて賠償額が減額(過失相殺)されます。しかし労災保険では、亡くなったご本人に事故の過失があった場合でも、労災保険の給付額は減額されません。
費目拘束があること
労災保険から給付を受けた後、加害者が加入している自動車保険に損害賠償請求するにあたり、同じ損害項目について重複して補償を受けることはできません(損益相殺)。
どのような損害項目から差し引くかについてのルールが費目拘束です。そして労災保険から支払われた給付金は、同一の性質を持つ損害賠償項目からのみ差し引かなければならないと定められています。
その結果、たとえば、労災保険から休業(補償)給付を受け取った場合、自動車保険における休業損害から差し引かれ、性質の異なる慰謝料等から差し引くことはできません。
労災保険には特別支給金があること
特別支給金等の労災保険独自の一部の給付は、自動車保険等などからの賠償額と調整(損益相殺)されず、重複して受け取ることができます。
まずは弁護士に無料相談
突然の労働災害でご家族が亡くなられると、その方の収入で生活していた遺族の方は、大切な家族が亡くなったことによる精神的苦痛だけでなく、明日からの生活も金銭的な困難に直面することになります。
ご家族を突然失った悲しみの中で、複雑な労災保険の手続きを進めたり、会社の責任を追及したりすることは、さらなる精神的・時間的に計り知れない負担を負うこととなります。
しかも、会社側は自社の責任を認めたがらないかもしれません。労災申請に非協力的であるかもしれません。さらに、ご遺族に対し「労災保険から補償が下りるから、会社としてこれ以上の支払いはできない」といった誤った説明をすることもあるかもしれません。
よつば総合法律事務所では、労働災害で大切なご家族を亡くされ、深い悲しみと不安の中にいらっしゃるご遺族のために、労働災害に精通した弁護士が頼れる味方になります。
「今後の手続きが分からない」
「生活の見通しが立たなくて不安」
「そもそも労災にあたるのかわからない」
「会社が何も対応してくれない」
「会社に損害賠償を請求していいのか知りたい」
どのようなことでも構いません。ご遺族の方が少しでも前に進むためのお手伝いができればと考えております。まずはお一人で悩まずご相談ください。
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