仕事中に手の指を骨折しました。とるべき対応と受け取れる補償はどのようなものですか?

仕事中に手の指を骨折してしまった場合、原則として労災の対象となります。

労災認定された場合、労災保険から治療費や休業補償を受け取れます。後遺障害が認定された場合、障害(補償)給付を受け取れます。

さらに会社の安全配慮義務違反の過失が認められる場合には、会社に対して慰謝料などの損害賠償を請求できる可能性があります。

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手の指の骨折が発生しやすいケース

仕事中に手の指を骨折する事故は、多くの製造現場や建設現場、運送の現場で発生する労働災害です。たとえば、次のようなケースがあります。

① 工場における機械への巻き込まれ
工場には様々な機械が稼働しており、プレス機に指を挟まれたり、ベルトコンベアに指が巻き込まれたりするケースがあります。
② 建設現場における転倒
建設現場における転倒時に、地面に強く手をついた衝撃で指を骨折するケースがあります。
③ 運送の現場における重量物の取扱い
運送の現場で重い荷物を指の上に落としてしまったり、荷物と荷物の間に指を挟みこんでしまったりするケースがあります。

手の指の骨折による後遺障害は3つの可能性

人にとって手の指を使った動きは必要なものばかりです。たとえば、次のような動きです。

  • 箸やフォークを使う
  • キーボードを入力する
  • スマートフォンを操作する
  • シャツのボタンをとめる

万が一、手の指の骨折により後遺障害が残ってしまった場合、仕事だけでなく日常生活にも大きな影響があります。

手の指の骨折が完治せず、後遺障害が残ってしまった場合には、大きく分けて、①機能障害、②欠損障害、③神経障害の3つの可能性があります。

機能障害

機能障害とは、手の指の関節が思うように動かなくなったり、指の機能が失われてしまったりする状態のことです。

具体的には、以下のような等級が定められています。

等級 障害の程度
第4級6号 両手の手指の全部の用を廃したもの
第7級7号 1手の5の手指または親指を含み4の手指の用を廃したもの
第8級4号 1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの又は親指以外の4の手指の用を廃したもの
第9級9号 1手の親指を含み2の手指の用を廃したもの又は親指以外の3の手指の用を廃したもの
第10級6号 1手の親指又は親指以外の2の手指の用を廃したもの
第12級9号 1手の人差し指、中指又は薬指の用を廃したもの
第13級4号 1手の小指の用を廃したもの
第14級7号 1手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

「手指の用を廃したもの」とは、次の場合などをいいます。

  • 手指の末節骨の長さの2分の1以上を失った場合
  • 中手指節関節若しくは近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)の可動域が2分の1以下に制限された場合

欠損障害

欠損障害とは、事故によって指の一部または全部を失った状態のことです。

具体的には、以下のような等級が定められています。

等級 障害の程度
第3級5号 両手の手指の全部を失ったもの
第6級7号 1手の5の手指又は親指を含み4の手指を失ったもの
第7級6号 1手の親指を含み3の手指を失ったもの又は親指以外の4の手指を失ったもの
第8級3号 1手の親指を含み2の手指を失ったもの又は親指以外の3の手指を失ったもの
第9級8号 1手の親指又は親指以外の2の手指を失ったもの
第11級6号 1手の人差し指、中指又は薬指を失ったもの
第12級8の2号 1手の小指を失ったもの
第13級5号 1手の親指の指骨の一部を失ったもの
第14級6号 1手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

「指を失ったもの」とは、次の場合をいいます。

  • 親指は指節間関節以上を失った場合
  • その他の手指は近位指節間関節以上を失った場合

神経障害

神経障害とは、骨折した部位に痛みやしびれが残る状態のことです。

具体的には、以下のような等級が定められています。

等級 障害の程度
第12級12号 局部にがん固な神経症状を残すもの
第14級9号 局部に神経症状を残すもの

12級が認定されるためには、痛みやしびれの症状が他覚的に証明できるものであることが必要とされています。

14級が認定されるためには、痛みやしびれの症状が医学的に説明可能であることが必要とされています。

労災保険への請求

労災保険は、業務上または通勤途上の災害によって労働者が負傷したり死亡したりした場合に、労働者や遺族に対して給付が行われる制度です。

仕事中に手の指を骨折したのであれば、原則として労災保険の給付対象となります。労災と認定されれば、次のような給付などを受けることができます。

① 療養(補償)給付
病院の治療費や薬代などが補償されます。
② 休業(補償)給付
労働災害で仕事を休業している間は、通常会社から給料は支払われません。そこで、労災保険の休業(補償)給付を受けることになります。
③ 障害(補償)給付
後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害の程度に応じて障害(補償)給付が受けられます。

会社への請求

労災事故が会社の安全配慮義務違反によって発生した場合、労災保険給付とは別に、会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

会社に対して損害賠償請求を行うには、事故状況を調査して安全配慮義務違反を主張立証する必要があります。

労災保険に請求する具体例

労災保険からどのような給付が受けられるか、具体的な数字で見ていきましょう。

事故状況:梱包作業中に重い荷物の下敷きとなり左手小指を骨折

年収:450万円

治療期間:6か月

休業期間:3か月(90日)

後遺障害:小指の関節が曲がらなくなった(後遺障害等級13級)

① 療養(補償)給付

治療費は労災保険から支払われるため、自己負担は0円です。

② 休業(補償)給付

仕事を休んだ90日間について、特別支給金も含め平均賃金の80%が支給されます。概ね次の計算です。

450万円÷365日×90日×80%=約88万円

  • ※労災保険の給付基礎日額は原則として直近3ヶ月の賃金から算出されますが、本記事では便宜上、年収を365日で割った額で計算しています。
  • ※労災保険では3日間の待期期間(給付がない期間)がありますが、本記事では便宜上省略して計算しています。

③ 障害(補償)給付

13級の場合、101日分の一時金が支給されます。概ね次の計算です。

450万円÷365日×101日=約124万円

その結果、労災保険から約212万円を受領できます。

労災保険と会社の両方に請求する具体例

労災保険から給付を受けつつ、会社に賠償を請求する場合について、具体的な数字で見ていきましょう。

事故状況:会社の極めてずさんな安全装置の不備により、一切過失の無い労働者が右手の親指を第一関節から失った

年収:600万円

治療期間:10か月(300日)

休業期間:10か月(300日)

後遺障害:親指欠損(後遺障害等級9級)

年齢:30歳

① 療養(補償)給付

治療費は労災保険から支払われるため、自己負担は0円です。

② 休業(補償)給付

仕事を休んだ300日間について、特別支給金も含め平均賃金の80%が支給されます。概ね次の計算です。

600万円÷365日×300日×80%=約394万円

③ 障害(補償)給付

9級の場合、391日分の一時金が支給されます。概ね次の計算です。

600万円÷365日×391日=約642万円

その結果、労災保険から約1036万円を受領することとなります。

また、会社の安全配慮義務が認められ、被災労働者に過失が一切認められなかった場合には、次の金額を会社から追加で受領できる可能性があります。

④ 入通院慰謝料

裁判所の基準で約145万円です。

⑤ 後遺障害慰謝料

9 級の場合の裁判所の基準で約690万円です。

⑥ 休業損害

休業損害全体(100%)のうち、労災保険の本体給付(60%)で補償されない残りの40%相当額を会社に請求します。概ね次の計算です。

600万円÷365日×300日×40%=約197万円

※労災から支給される特別支給金(20%)は損害賠償額から差し引かれないため、被害者は実質的に手取りが増えることになります。

⑦ 逸失利益

将来に対する減収の賠償です。後遺障害9級の労働能力喪失は35%です。

30歳で被災して治療終了となった場合、期間は67歳までの37年間となります。

600万円×35%×22.1672年(37年のライプニッツ係数)=約4655万円

なお、労災の障害(補償)給付約642万円を差し引き約4013万円となります。その結果、会社から約5045万円の賠償を受領できる可能性があります。


よくあるご質問

手の指を骨折しました。事故後早期にすべき点は?

最も重要なのは、すぐに病院を受診することです。時間が経ってから初めて病院を受診した場合、因果関係が認められず、労災認定がなされないことがあります。

また、会社へすぐに報告することも重要です。労災申請をスムーズに進めるために、いつ、どこで、何が起こったかを確定させることが必要です。

手の指が曲がりません。後遺障害の認定のポイントは?

どのくらい指が曲がらないのか、客観的な可動域制限の度合いが最も重要です。医師による測定が基準となりますので、リハビリを通じて正確な角度を記録してもらう必要があります。

また、指が曲がらない原因を医学的に証明することも重要です。骨の変形や癒合不全などをレントゲンなどで確認できる必要があります。

手の指に痛みやしびれがあります。後遺障害の認定のポイントは?

手の指に痛みやしびれが残ってしまった場合、症状の継続性が重要です。事故直後から現在に至るまで症状が一貫して続いていることが必要となるため、医師に症状の訴えを記録してもらう必要があります。

また、検査画像や神経学的な検査結果と症状が一致していることも重要です。

単に痛みやしびれがあると訴えるだけではなく、痛みやしびれを裏づける検査をしっかりと受けておくことが必要となります。

まとめ:まずは弁護士に相談

仕事中に手の指を骨折し、万が一後遺障害が残ってしまったら、その後の生活や仕事に大きな影響があります。

労災保険の申請や後遺障害の認定、その後の会社への損害賠償請求を個人で行うと、適切な賠償額とならないことがあります。

まずお気軽に弁護士にご相談ください。