労災事故で後遺障害11級に認定された場合、労働者災害補償保険(労災保険)から次の3種類の給付を受け取れます。
- 障害補償等一時金(給付基礎日額の223日分)
- 障害特別支給金(11級の場合は29万円)
- 障害特別一時金(算定基礎日額の223日分)
ただ、労災保険からの給付は、あくまでも公的な補償であり、被災者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料や、将来の収入減(逸失利益)の全額は含まれていません。
会社に安全配慮義務違反などの法的な責任がある場合、労災保険とは別に会社に対して民事上の損害賠償を請求して、追加の賠償金を受け取ることができます。
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後遺障害11級の労災保険からの支給
労災事故による治療を続けた結果、これ以上症状の改善が見込めない「治癒」(症状固定)と判断された後に、体に後遺症が残存した場合、労働基準監督署長に対して後遺障害の申請を行います。
その結果、後遺障害11級に認定されると、次の3種類の給付が一時金として支給されます。
障害補償等一時金
後遺障害が残ったことによる労働能力の喪失に対する基本的な補償給付です。
後遺障害11級の場合、賃金などを基準に計算する給付基礎日額の223日分が支給されます。
給付基礎日額とは、原則として、事故が発生した日、または医師の診断によって病気の発症が確定した日の直前3ヶ月間に、その労働者に対して支払われた賃金総額を、その期間の暦日数で割った1日あたりの金額です。
障害特別支給金
後遺障害11級の場合、給付基礎日額に関係なく、一律で29万円が支給されます。
障害特別一時金
後遺障害11級の場合、ボーナスなどを基準に計算する算定基礎日額の223日分が支給されます。
算定基礎日額とは、原則として、事故発生日または発病した日の以前1年間に、その労働者に対して支払われた特別給与(ボーナスなど)の総額を365日で割った1日あたりの金額です。

労災保険からの実際の支給額の具体例
労災保険からの支給額は、給付基礎日額と算定基礎日額によって決まります。
たとえば、給付基礎日額が10,000円、算定基礎日額が2,000円の場合、合計で2,966,000円となります。
| 給付の種類 | 金額 |
|---|---|
| 障害補償等一時金 | 2,230,000円(10,000円 × 223日分) |
| 障害特別支給金 | 290,000円(定額) |
| 障害特別一時金 | 446,000円(2,000円 × 223日分) |
| 合計額 | 2,966,000円 |
また、給付基礎日額が15,000円、算定基礎日額が3,000円の場合、合計で4,304,000円となります。
| 給付の種類 | 金額 |
|---|---|
| 障害補償等一時金 | 3,345,000円(15,000円 × 223日分) |
| 障害特別支給金 | 290,000円(定額) |
| 障害特別一時金 | 669,000円(3,000円 × 223日分) |
| 合計額 | 4,304,000円 |
労災保険以外に請求できる金額
労災事故の原因が会社(使用者)の安全配慮義務違反などにある場合、被害者は労災保険からの給付とは別に、会社に対して損害賠償を請求できます。
この損害賠償請求で認められる金額は、労災保険の給付額よりも高額になることが一般的です。
入院や通院の慰謝料
入通院期間に応じて精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。労災保険から慰謝料は支払われません。
様々な基準のなかで一番高額となることが多い、裁判所の基準(弁護士が交渉や訴訟で用いる基準)で請求をしましょう。
たとえば、事故による骨折で2か月入院して、その後10か月通院した場合、裁判所の基準での入通院慰謝料は203万円が相場です。
後遺障害の慰謝料
後遺障害が残存したことによる、将来にわたる精神的苦痛に対する賠償金です。労災保険から慰謝料は支払われません。
後遺障害11級の場合、裁判所の基準は420万円が相場です。
逸失利益
後遺障害が残ったことで、将来の労働能力が失われ、その結果収入が減ることによる損害に対する賠償金です。
たとえば、年収500万円の45歳の被災者が脊柱圧迫骨折で後遺障害11級となった場合、逸失利益は15,936,900円となります。計算式は次のとおりです。
計算式
5,000,000円(年収)×20%(労働能力喪失率)×15.9369(ライプニッツ係数22年分)
- 11級の労働能力喪失率の原則は20%です。
- 脊柱変形障害の場合には、労働能力喪失率や労働能力喪失期間が一定程度制限される場合があります。
- ライプニッツ係数は、原則として症状固定日から67歳までの期間で計算します。
その他の損害
労災保険からの休業補償給付では全額受領できなかった休業損害などを、会社に請求できます。

会社から支払われる賠償額の具体例
① 脊柱圧迫骨折の具体例
年収650万円の55歳の会社員が脊柱圧迫骨折をして3か月入院し、その後9か月通院しました。後遺障害は11級となりました。
裁判所の基準に基づくと、後遺障害11級の場合の会社への請求額は19,400,200円です。
| 内訳 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料 | 2,260,000円(3か月入院、9か月通院) |
| 後遺障害慰謝料 | 4,200,000円 |
| 逸失利益 | 12,940,200円 |
| 合計 | 19,400,200円 |
- 労災保険から既に受領している障害補償等一時金は差し引いて請求します。
- 労災保険からの休業補償給付では全額受領できなかった休業損害は別途請求できます。
② 視力障害(複視を残すもの等)の具体例
年収420万円の30歳の会社員が業務中の負傷により複視が残り、12か月通院しました。後遺障害は11級となりました。
裁判所の基準に基づくと、後遺障害11級の場合の会社への請求額は24,360,448円です。
| 内訳 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料 | 1,540,000円(12か月通院) |
| 後遺障害慰謝料 | 4,200,000円 |
| 逸失利益 | 18,620,448円 |
| 合計 | 24,360,448円 |
- 労災保険から既に受領している障害補償等一時金は差し引いて請求します。
- 労災保険からの休業補償給付では全額受領できなかった休業損害は別途請求できます。
- 入通院慰謝料は別表Ⅰで計算しています。
- 労働能力喪失期間は37年(ライプニッツ係数22.1672)で計算しています。

よくあるご質問
治療を続けていますが、いつ後遺障害申請をすればよいですか?
後遺障害の申請は、治療を継続してもこれ以上症状の改善が見込めない状態(症状固定)になってから行います。
11級の後遺障害の場合、6か月を超えた段階が1つの目安です。6か月~1年6か月での症状固定が多いです。
労災保険から慰謝料は支払われますか?
労災保険から慰謝料は支払われません。会社に法的な責任がある場合に限り、会社に損害賠償請求して獲得できます 。
給付基礎日額とは何ですか?
給付基礎日額とは、原則として、事由発生日の直前の賃金締切日の直前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った1暦日当たりの賃金額のことです。
- 事由発生日とは、業務上又は通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日又は診断によって病気にかかったことが確定した日です。
算定基礎日額とは何ですか?
算定基礎日額とは、原則として、事由発生日以前1年間に、その労働者が事業主から受けた特別給与の総額を算定基礎年額として365で割って得た額です。
- 事由発生日とは、業務上又は通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日又は診断によって病気にかかったことが確定した日です。
- 特別給与とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3か月を超える期間ごとに支払われる賃金をいいます。臨時に支払われた賃金は含まれません。
圧迫骨折で11級になるのはどのような場合ですか?
脊柱(背骨)に圧迫骨折が生じ、レントゲンやMRI等の画像所見で骨の変形が客観的に確認できる場合、11級7号(脊柱に変形を残すもの)に認定される可能性があります。
圧迫骨折(11級)認定への異議申立てで上位等級になりますか?
圧迫骨折の程度が著しく、脊柱に著しい変形や運動障害(首や腰が動かなくなる等)が残っていることが医学的に証明できれば、異議申立て(審査請求)によって8級や6級といった上位等級に変更される可能性があります。
まとめ:まずは弁護士に相談
労災事故で11級になった場合、労災保険からの補償と会社からの賠償の2つが考えられます。
そのため、労災事故で後遺症が残りそうな場合、次の点を検討しましょう。
- 後遺障害の等級認定が適切か?
- 会社に責任(安全配慮義務違反)があるか?
- 慰謝料や逸失利益など、適正な計算方法になっているか?
もっとも、労災事故はルールが複雑で専門的な知識が必要です。被災者の方だけで進めるのは困難です。
よつば総合法律事務所では、労働災害に関する豊富な経験を持つ弁護士が在籍しており、被災者の方が適正な補償を受けられるよう全力でサポートいたします。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。