労災の逸失利益はどのように計算しますか?

逸失利益とは、労災事故による後遺障害や死亡により、将来得られるはずだったのに得られなくなった収入を補償するものです。

「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」で計算します。

労災でお困りの方へ

弁護士による無料相談受付中

弁護士による無料相談受付中

メールで相談

無料相談申し込み

24時間365日受付

電話で相談

0120-916-746

受付時間 平日・土日祝日/6:00〜22:00

※本予約ダイヤルでの電話相談は行っておりません。

労災の逸失利益

労災事故により、後遺障害が残ってしまったり、亡くなってしまった場合、今まで通り働いて収入を得ることができなくなってしまいます。ここで重要となるのが、逸失利益(いっしつりえき)です。

労災の逸失利益とは?

逸失利益とは、労災事故による後遺障害や死亡により、将来得られるはずだったのに得られなくなった収入を補償するものです。

労災保険から支給される障害補償給付は逸失利益の一部を補うものですが、全額をカバーできないケースがあります。そのような場合、不足分を会社の安全配慮義務違反(落ち度)などを理由に損害賠償請求ができることがあります。

労災の逸失利益が請求できるケースとできないケース

労災事故で逸失利益を請求するためには、一定の条件が必要です。

請求できるケースの例 

逸失利益を会社に請求できるのは、次の条件すべてを満たす場合です。

  1. 後遺障害等級(1級~14級)が認定された(または、死亡した)。
  2. 会社に安全配慮義務違反、または、他の従業員の不注意について会社が責任を負う(使用者責任)などの事情が認められる。

請求できないケースの例

逸失利益を会社に請求できないのは、次のような場合です。

  1. けがをしたが、後遺障害は残らずに完治した。
  2. 会社に安全配慮義務違反や使用者責任が認められない。

逸失利益の計算の注意点

「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式で逸失利益は計算します。

基礎収入

事故前年の1年間の年収(額面)が基準になります。たとえば、次のような基準です。

職業 計算ルール
会社員 源泉徴収票の支払金額欄の記載
個人事業主 確定申告書の所得金額欄の記載

ただし、30歳未満の場合、将来の多様な可能性や昇給等を考慮して、実際の年収ではなく平均賃金(賃金センサス)を用いることがあります。

労働能力喪失率

労災事故により、どのくらいの労働能力が失われたかを表す数値です。原則として、後遺障害等級ごとに定められた基準を用います。

後遺障害等級 労働能力喪失率
1級 100%
2級 100%
3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 35%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

ただし、職種や後遺障害が残った部位等の個別事情により、基準とは異なった労働能力喪失率となることもあります。

労働能力喪失期間

労災事故により、労働能力の喪失が続く期間です。原則として、症状固定日(概ね治療終了日)から67歳までの期間です。ただし、具体的な状況に応じて以下のような目安があります。

被害者の状況 労働能力喪失期間
通常の場合 67歳までの年数
18歳未満の子供 49年(18歳から67歳まで)
大学生 大学卒業から67歳までの年数
67歳までの期間が短い場合 「67歳までの年数」と「平均余命の2分の1の年数」のうち長い年数
67歳を超えている場合 平均余命の2分の1の年数
むちうちの場合 14級は5年程度
12級は10年程度

ライプニッツ係数

労災事故により逸失利益の補償を受ける場合、将来受け取るはずの利益を現時点で現金で一括で受け取ることになります。そのため、将来発生する利息をあらかじめ差し引く(中間利息控除)ための係数がライプニッツ係数です。

控除される中間利息は、法定利率である年3%で計算します。


具体的な計算例

では労災事故による後遺障害や死亡による逸失利益について、具体的に計算してみましょう。

後遺障害12級の場合

年収500万円の会社員(40歳)が後遺障害等級12級になった場合で計算します。

① 年収(源泉徴収票の支払金額欄)

500万円

② 労働能力喪失率 (12級の標準的な割合)

14%

③ 労働能力喪失期間(症状固定日から67歳まで)

27年(ライプニッツ係数は18.3270)

④ 逸失利益 (年収×労働能力喪失率×27年のライプニッツ係数)

1282万8900円

計算式

500万円×14%×18.3270=1282万8900円

後遺障害7級の場合

年収500万円の会社員(40歳)が後遺障害等級7級になった場合で計算します。

① 年収(源泉徴収票の支払金額欄)

500万円

② 労働能力喪失率 (7級の標準的な割合)

56%

③ 労働能力喪失期間(症状固定日から67歳まで)

27年(ライプニッツ係数は18.3270)

④ 逸失利益 (年収×労働能力喪失率×27年のライプニッツ係数)

5131万5600円

計算式

500万円×56%×18.3270=5131万5600円

死亡の場合

死亡の場合は生活費控除率を検討

労災事故で亡くなられた場合、労働能力喪失率は100%です。

ただし、亡くなられた方の生活費がかからなくなるため、生活費控除(30%~50%)を行います。その結果、計算式は次のようになります。

基礎収入×労働能力喪失率×(100%-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

死亡の場合の具体的な逸失利益の計算方法

年収500万円の会社員(40歳)で妻と子供2人がいる一家の支柱が死亡した場合で計算します。

① 年収(源泉徴収票の支払金額欄)

500万円

② 労働能力喪失率 (死亡)

100%

③ 生活費控除後の割合(かからなくなった生活費30%を控除)

70%(100%-30%)

③ 労働能力喪失期間(症状固定日から67歳まで)

27年(ライプニッツ係数は18.3270)

④ 逸失利益 (年収×労働能力喪失率×生活費控除率を控除後の割合×27年のライプニッツ係数)

6414万4500円

計算式

500万円×100%×70%×18.3270=6414万4500円

生活費控除率の目安

死亡の場合の生活費控除率の目安は、次のとおりです。

属性 控除の割合
一家の支柱(被扶養者1人) 40%
一家の支柱(被扶養者2人) 30%
女性  30%
男性(独身、幼児等)  50%

後遺障害認定で労災から受け取れる補償

後遺障害が認定された場合、労災保険から障害補償給付が支払われます。これは逸失利益を補うものとなりますが、等級によって受け取り方法が異なります。

等級 給付の形態
1級から7級 障害補償年金(毎年定期的に支給)
8級から14級 障害補償一時金(一括で支給)

8級から14級の場合

後遺障害等級が8級から14級の場合、障害補償一時金が支給されます。さらに上乗せとして、障害特別支給金と障害特別一時金が支給されます。

等級 障害補償一時金 障害特別支給金 障害特別一時金
8級 503日分 65万円 503日分
9級 391日分 50万円 391日分
10級 302日分 39万円 302日分
11級 223日分 29万円 223日分
12級 156日分 20万円 156日分
13級 101日分 14万円 101日分
14級 56日分 8万円 56日分

給付基礎日額と算定基礎日額

① 給付基礎日額

直前3か月間に労働者に対して支払われた賃金の総額を、暦日数で割った1暦日あたりの賃金額のことです

② 算定基礎日額

1年間に労働者が事業主から受けた特別給与の総額365で割って得た額です。特別給与とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3 か月をこえる期間ごとに支払われる賃金のことです。

1級から7級の場合

後遺障害等級が1級から7級の場合、障害補償年金が支給されます。さらに上乗せとして、障害特別支給金と障害特別年金が支給されます。

等級 障害補償年金(毎年) 障害特別支給金(1回限り) 障害特別年金(毎年)
1級 313日分 342万円 313日分
2級 277日分 320万円 277日分
3級 245日分 300万円 245日分
4級 213日分 264万円 213日分
5級 184日分 225万円 184日分
6級 156日分 192万円 156日分
7級 131日分 159万円 131日分

死亡の場合

死亡の場合、遺族補償年金が支給されます。さらに上乗せとして、遺族特別支給金と遺族特別年金が支給されます。

遺族の数 遺族補償年金(毎年) 遺族特別支給金(1回限り) 遺族特別年金(毎年)
1人 153日分 300万円 153日分
2人 201日分 300万円 201日分
3人 223日分 300万円 223日分
4人以上 245日分 300万円 245日分
  • 遺族数が1人の場合、「その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は給付基礎日額の153日分ではなく175日分」という例外があります。
  • 遺族補償年金は、給付基礎日額に対応する日数の支給です。
  • 遺族特別年金は、算定基礎日額に対応する日数の支給です。

損益相殺

労災事故にあった労働者が、労災事故とは別に会社に対して損害賠償請求をする場合、損益相殺が問題となります。

損益相殺とは

損益相殺とは、労災保険に基づいて支給された給付のうちの一部については、損害を補うものであるとして、会社からの損害賠償額から差し引かれることです。

会社への損害賠償から差し引かれる給付、差し引かれない給付の具体例は次のとおりです。

項目 差し引かれる 差し引かれない
治療費関係 療養(補償)給付
休業関係 休業(補償)給付 休業特別支給金
後遺障害関係 障害(補償)年金
障害(補償)一時金
障害特別年金
障害特別一時金
障害特別支給金
遺族(補償)関係 遺族(補償)年金
遺族(補償)一時金
遺族特別年金
遺族特別一時金
遺族特別支給金
葬祭料関係 葬祭料(葬祭給付)
介護関係 介護(補償)給付
その他 装具費等
労災就学等援護費
二次健康診断等給付
アフターケア制度

損益相殺の具体例

では労災事故による後遺障害や死亡による逸失利益と損益相殺について、具体的に計算してみましょう。

後遺障害12級の場合

年収500万円(賞与無)の会社員(40歳)、後遺障害等級12級の場合 逸失利益総額は1282万8900円が目安です。

労災保険から支給される給付のうち、損益相殺される金額は障害補償一時金です。障害特別支給金、障害特別一時金は、損益相殺されません。

そして、給付基礎日額は約1万3700円となり、障害補償一時金は213万7200円となります。

計算式

1万3700円×156日(12級の基準)=213万7200円

その結果、会社に請求できる逸失利益は1069万1700円となります。

計算式

1282万8900円(逸失利益総額)-213万7200円(障害補償一時金)

後遺障害7級の場合

① 逸失利益総額の計算

年収500万円(賞与無)の会社員(40歳)、後遺障害等級7 級の場合、逸失利益総額は5131 万2600円が目安です。

② 差引される労災給付の年額

労災保険から支給される給付のうち、損益相殺される金額は障害補償年金です。障害特別支給金、障害特別年金は、損益相殺されません。

そして、給付基礎日額は約1万3700円となり、障害補償年金は年額179万4700円となります。

計算式

1万3700円×131日(7級の基準)=年間179万4700円

③ 差し引かれるトータルの障害補償年金の金額

たとえば、3年分の障害補償年金を受け取っていた場合、年間179万4700円×3年分の538万4100円が原則として差し引かれます。

④ 最終的に会社に請求できる逸失利益

その結果、会社に請求できる逸失利益は4593万1500円となります。

計算式

5131万5600円(逸失利益総額)-538万4100円(3年分の障害補償年金)

死亡の場合

① 逸失利益総額の計算 

年収500万円の会社員(40歳)で妻と子供2人がいる一家の支柱が死亡した場合、逸失利益総額は6414万4500円です。

② 差引される労災給付の年額

労災保険から支給される給付のうち、損益相殺される金額は遺族補償年金です。遺族特別支給金、遺族特別年金は、損益相殺されません。

遺族数が3名の場合の遺族補償年金の金額は、年額305万5100円となります。

計算式

1万3700円×223日(遺族3名)=年間305万5100円

③ 差し引かれるトータルの遺族補償年金の金額

たとえば、3年分の遺族補償年金を受け取っていた場合、年間305万5100円×3年分の916万5300円が原則として差し引かれます。

④ 最終的に会社に請求できる逸失利益

その結果、会社に請求できる逸失利益は5497万9200円となります。

計算式

6414万4500円(逸失利益総額)-916万5300円(3年分の遺族補償年金)

逸失利益以外に請求できる項目

会社の安全配慮義務違反などを理由に損害賠償請求を行う場合、逸失利益以外にも次の項目を請求することができる可能性があります。

入通院慰謝料

労災事故によるけがの治療のため入院や通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する賠償です。治癒または症状固定までの、入院期間や通院期間をベースに計算します。

労災保険には慰謝料という項目自体がないため、会社へ請求を行う必要があります。

後遺障害慰謝料

労災の事故により後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する賠償です。認定された後遺障害等級に応じて、一定の基準が定まっています。

休業損害

労災事故の治療のために休業を行い、給料の減額が行われた場合の休業損害に対する賠償です。1日あたりの基礎収入×休業日数で計算します。

その他

将来介護費 

常時あるいは見守り介護が必要になるような重篤な後遺障害が残ってしまった場合、将来にわたって発生する介護費用に対する賠償です。

家屋改造費 

たとえば、車椅子生活を余儀なくされるような重篤な後遺障害が残ってしまった場合、自宅の段差を解消するための家屋改造費などに対する賠償です。

付添費

入院や通院に際し、家族の付き添いが必要であった場合に対する賠償です。

葬儀費用

労災事故により亡くなった場合、お葬式の費用やお墓代などの葬儀関連費用に対する賠償です。 

よくあるご質問

基礎収入をより有利に計算する方法は?

基礎収入は、事故前年度の年収を基準とするのが原則です。

① 会社員の場合

会社員の場合、残業代や賞与が適正に反映されているか確認しましょう。

② 個人事業主の場合

個人事業主の場合、節税のために所得を低く申告していることがあります。実際の所得を主張・立証することも検討しましょう。

③ 20代などの若年労働者の場合

20代などの若年労働者の場合、事故前年度の年収を基準とすると基礎収入が低くなりすぎることがあります。そのため、基礎収入として平均賃金(賃金センサス)を使うことを検討しましょう。

労働能力喪失率をより有利に計算する方法は?

労働能力喪失率には、14級の場合5%、12級の場合14%といった目安はあります。

しかし、精密な作業を要求される職人が手や指を負傷した、重い荷物を運ぶ必要がある作業員が腰を痛めたというように、労災事故が仕事にどのように影響するかを具体的に主張することで、基準以上の労働能力喪失率を主張することを検討しましょう。

労働能力喪失期間をより有利に計算する方法は?

労働能力喪失期間は、原則として症状固定日から67歳までです。

既に67歳に近い高齢の場合や、67歳を超えている場合、平均余命の半分を労働能力喪失期間として主張しましょう。

事故前と事故後で年収が変わらない場合でも逸失利益は請求できる?

事故前と事故後で年収が変わらない場合、逸失利益が発生していないと主張されることがあります。

しかし、年収が下がっていない原因が次のような場合もあります。

  1. 本人が痛みをこらえ、以前にも増して努力して働いている。
  2. 今は会社が配慮してくれているが、将来にわたって配慮が続くとは限らない。
  3. 昇進や配置転換で不利益な扱いを受ける。
  4. 転職において不利になる

このような将来の不利益を具体的に主張・立証して、逸失利益を請求しましょう。

労働者に落ち度(過失)がある場合、どう計算する?

労働者に落ち度(過失)があった場合、過失相殺によって賠償額が減額されます。

減額の計算方法は次のとおりです。

  1. まず、労働者に落ち度(過失)がないものとして損害額を計算します
  2. その後、労働者の落ち度(過失)をかけ、労働者の過失割合を差し引きます

会社は自らの責任を軽くするため、労働者の過失割合を大きく主張することがあります。具体的な事実に基づき、適切な過失割合を主張しましょう。

休業損害と逸失利益の違いは?

休業損害と逸失利益は、いずれも事故がなければ得られたはず利益ですが、次のような違いがあります。

① 休業損害

対象となる期間は、事故発生から治癒・症状固定までです。治療のための入院や通院のために仕事を休んだことにより発生した減収に対する賠償です。

② 逸失利益 

対象となる期間は、症状固定後です。後遺障害が残ったことで、将来に発生する減収に対する賠償です。

労災を弁護士に相談するメリット

① 適正な後遺障害等級の獲得 

逸失利益の計算において、最も大きな影響を与えるのが後遺障害等級です。等級が一つ違うだけで、賠償額が大きく変わることとなります。

医学的証拠の検討
弁護士が、医師が作成する診断書・後遺障害診断書・検査画像の内容を確認し、記載漏れがないか等を確認します。
後遺障害認定結果の妥当性
後遺障害認定基準に照らし、認定された後遺障害等級が適正か確認を行います。
異議申立
後遺障害認定結果に納得がいかない結果であった場合、異議申し立ての手続きを行い、再審査を求めます。

② 会社との交渉

代わりに会社と交渉
労災事故にあった労働者が会社と交渉することは、会社から「会社に責任はない」などと主張されて交渉すること自体が難しい可能性があります。
安全配慮義務違反の検討
事故当時の作業内容、指示内容、安全設備の不備、長時間労働の実態などを検討し、会社の責任を追求します。
過失相殺の検討 
会社が主張してくる労働者の落ち度(過失)について、当日の動き、指示内容、設備状況などを検討し、適切な過失割合に基づく賠償を求めます。

よつば総合法律事務所のサポート内容

① 労災事故の対応経験が豊富なチームが対応

よつば総合法律事務所では、労災事故を多く取り扱う労災チームが対応します。

労災事故は、適正な後遺障害等級の獲得や会社との交渉において、医学的知識・法律的知識の双方に専門的な知識が求められます。数多くの労災事故を取り扱ってきた弁護士が、事案に応じて納得いく解決を目指します。

② 労災申請のサポート

「会社が労災を認めてくれない」「手続きのやり方が分からない」という状況でも、お気軽にご相談ください。労働基準監督署への提出書類の準備等をサポートいたします。

③ 後遺障害認定のサポート

適正な後遺障害等級が獲得できるよう、医学的証拠の検討を行います。後遺障害認定結果に納得がいかない結果であった場合、異議申し立ての手続きを行います。

④ 会社との交渉

労災保険だけではカバーしきれない、逸失利益や慰謝料を会社に対して請求します。交渉や裁判手続きを通じて、正当な賠償を獲得します。

労災の逸失利益は、労災事故に遭われた方やご家族のこれからを支える大切な賠償です。労災の逸失利益に不安がある方は、よつば総合法律事務所にご相談ください。