労災事故で後遺障害1級に認定された場合、労働者災害補償保険(労災保険)から次の3種類の給付を受け取れます。
- 障害補償等年金(給付基礎日額の313日分を毎年支給)
- 障害特別支給金(1級の場合は342万円)
- 障害特別年金(算定基礎日額の313日分を毎年支給)
ただ、労災保険からの給付は、あくまでも公的な補償であり、被災者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料や、将来の収入減(逸失利益)の全額は含まれていません。
会社に安全配慮義務違反などの法的な責任がある場合、労災保険とは別に会社に対して民事上の損害賠償を請求して、追加の賠償金を受け取れます。
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後遺障害1級の労災保険からの支給
労災事故によって後遺障害1級に認定された場合、労災保険からは障害補償等年金、障害特別支給金、障害特別年金の3つが支給されます。
1級は最も重度の障害であるため、一時金ではなく、生涯にわたって定期的に支給される年金が給付の主軸となります。
障害補償等年金
障害補償等年金は、労災保険から支給される基本的な年金です。後遺障害1級の場合は、給付基礎日額の313日分が毎年支給されます。
原則として、偶数月の年6回に分けて、2ヶ月分ずつ本人の口座へ支払われます。
障害特別支給金
障害特別支給金は、被災労働者の社会復帰を支援するために、福祉的観点で国から支給される一時金です。
後遺障害1級の場合は、年金ではなく初回に一度だけ、定額で342万円が支給されます。
障害特別年金
障害特別年金は、事故前1年間に労働者が受け取っていたボーナス(賞与)などの特別給与をベースに計算される年金です。
後遺障害1級の場合は、算定基礎日額の313日分が毎年支給されます。

労災保険からの実際の支給額の具体例
労災保険から実際に支給される金額を、給付基礎日額および算定基礎日額の2つのパターンで試算しました。
① 給付基礎日額が10,000円、算定基礎日額が2,000円の場合
| 給付の種類 | 金額 |
|---|---|
| 障害補償等年金 | 3,130,000円(毎年支給) |
| 障害特別支給金 | 3,420,000円(初回のみ) |
| 障害特別年金 | 626,000円(毎年支給) |
| 年間の受取額(初回除く) | 3,756,000円 |
② 給付基礎日額が15,000円、算定基礎日額が3,000円の場合
| 給付の種類 | 金額 |
|---|---|
| 障害補償等年金 | 4,695,000円(毎年支給) |
| 障害特別支給金 | 3,420,000円(初回のみ) |
| 障害特別年金 | 939,000円(毎年支給) |
| 年間の受取額(初回除く) | 5,634,000円 |
労災保険以外に請求できる金額
労災保険は被災労働者を救済するための制度ですが、労働者の全ての損害を埋めてくれるわけではありません。
会社側に安全配慮義務違反(事故を防ぐための適切な安全対策を怠っていたなど)がある場合は、労災保険でカバーされない以下の損害を会社に対して請求できます。
入院や通院の慰謝料
労災事故による怪我のために、入院や通院を余儀なくされたことに対する精神的苦痛への補償です。
治療にかかった期間や実際の通院日数に応じて、裁判基準(弁護士基準)をもとに適切な慰謝料を算出します。
後遺障害の慰謝料
後遺障害1級という重い障害が残ってしまったこと自体に対する精神的苦痛への補償です。
労災保険には慰謝料という項目自体が存在しないため、全額を会社に請求することになります。裁判基準(弁護士基準)における後遺障害1級の慰謝料相場は2,800万円となります。
逸失利益
後遺障害が残ったことにより労働能力が低下し、将来にわたって得られるはずだったのに失われた収入(減収分)に対する補償です。
後遺障害1級の労働能力喪失率は100%と定められており、労働能力のすべてを喪失したとみなされるため、請求額は数千万円から1億円を超えるような場合もあります。
その他の損害
必要性が認められる場合の将来介護費用、通院交通費、車椅子や義手・義足などの購入費用、自宅や自動車の改造費用など、事故によって発生した実費や将来必要となる費用についても請求が可能です。

会社からの実際の支給額の具体例
① 高次脳機能障害のケース
年収600万円の45歳会社員が、頭部外傷による高次脳機能障害(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常時介護を要するもの)を患い、6ヶ月入院して後遺障害1級が認定された事例です。
| 内訳 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料 | 2,440,000円(6ヶ月入院) |
| 後遺障害慰謝料 | 28,000,000円(1級相場) |
| 逸失利益 | 95,621,400円(6,000,000円 × 100% × 15.9369 [22年分]) |
| 合計 | 126,061,400円 |
※逸失利益の計算:45歳から67歳までの22年間(ライプニッツ係数15.9369)で算出しています。この総額から労災保険より受給した年金等の支給分が控除され、残額が会社へ追加請求する額となります。
② 身体障害のケース
年収550万円の35歳会社員が、工場内での機械巻き込まれ事故により両腕に深刻な被害を受け、3ヶ月入院・9ヶ月通院して、両上肢を肘関節以上で失って後遺障害1級が認定された事例です。
| 内訳 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料 | 2,260,000円(3ヶ月入院・9ヶ月通院) |
| 後遺障害慰謝料 | 28,000,000円(1級相場) |
| 逸失利益 | 112,138,400円(5,500,000円 × 100% × 20.3888 [32年分]) |
| 合計 | 142,398,400円 |
※逸失利益の計算:35歳から67歳までの32年間(ライプニッツ係数20.3888)で算出しています。この総額から労災保険より受給した年金等の支給分が控除され、残額が会社へ追加請求する額となります。
よくあるご質問
治療中ですが、いつ後遺障害申請をすればよい?
これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと医師が判断した状態(症状固定)になった後に申請を行います。
一般的には事故や治療開始から6ヶ月以上経過したタイミングが一つの目安となりますが、受傷部位や程度によっては1年以上かかることもあります。
労災保険から慰謝料は支払われる?
労災保険から慰謝料は支払われません。労災保険は最低限の生活補償を目的とした公的保険であり、精神的苦痛に対する賠償である慰謝料の制度がないためです。
慰謝料を受け取るためには、会社に対して民事上の損害賠償請求を行う必要があります。
給付基礎日額とは?
原則として、労災事故が発生した日の直前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた総額(ボーナスなどの特別に支払われた賃金を除く)を、その期間の総日数で割った1日当たりの金額です。
算定基礎日額とは?
労災事故が発生した日の前1年間に、その労働者が会社から受け取ったボーナス(賞与)などの特別給与の総額を365で割った1日当たりの金額です。
傷病補償等年金とは?
労災事故による怪我や病気の治療を開始してから1年6ヶ月が経過した時点で治っておらず、その障害の程度が労災保険の定める傷病等級(1級〜3級)に該当する場合に支給される年金です。
これに切り替わると、それまでの休業補償等給付から傷病補償等年金へと移行します。
介護補償給付とは?
労災保険の給付の一つで、後遺障害または傷病の程度が1級または2級(精神神経系統や胸腹部臓器の障害など)に該当し、現に常時または随時介護を受けている場合に、毎月の介護費用として国から支給されるものです。
年金はいつからいつまでもらえる?
症状固定(これ以上治療を続けても改善が見込めないと診断された状態)となった日の属する月の翌月分から支給されます。被災された労働者本人が亡くなるまで一生涯支給され続けます。
年金ではなく一時金としてもらえる?
障害補償前払一時金という制度を利用することで、将来受け取る年金の一部をまとまった一時金として先に受け取ることができます。
後遺障害1級の場合、上限を1,340日分として、200日分、400日分、600日分、800日分、1,000日分、1,200日分、1,340日分の7つの選択肢から選んで前払いを受けることが可能です。ただし、前払いを受けた分、その金額に達するまでその後の年金支給は停止されます。
年金受給中に亡くなった場合、遺族への補償は?
年金を受給している方が亡くなった時点で、それまでに受け取った年金の合計額が、後遺障害1級の補償限度である1,340日分に達していなかった場合、その差額が障害補償差額一時金として遺族に支給されます。
労災から介護費用(介護補償給付)は支給される?
後遺障害1級の場合、障害の内容(神経系統の機能や精神・胸腹部臓器の障害など)によって常時または随時介護を必要とする状態にあれば、労災保険の介護補償等給付を申請して毎月の介護費用を受け取ることができます。
車椅子や義手・義足、義眼などの費用は支給される?
後遺障害1級に認定されるような重度の身体障害が残った場合、労災保険の社会復帰促進等事業の一環である義肢等補装具費支給制度を利用して、失われた機能を補うための義手、義足、義眼、車椅子などの購入費用や修理費用の支給(現物給付を含む)を受けることができます。
まとめ:まずは弁護士に相談
後遺障害1級は、労働能力を100%喪失するとされる重い障害です。
労災保険から支給される生涯にわたる年金や介護補償は一定程度生活の支えとなりますが、それだけで精神的苦痛のすべてや、本来発生している損害のすべてを完全にカバーできるわけではありません。
会社側に少しでも安全対策の不備が認められる場合は、会社に対する民事上の損害賠償請求を行うことで、最終的な獲得金額が大幅に増額する可能性があります。しかし、労災保険の複雑な手続きや、会社との対等な賠償交渉を被災者ご自身やご家族だけで進めるのは大きな負担となります。
適正な補償を確実に受け取り、これからの長い生活を少しでも安心して送るためにも、まずは労働災害に詳しい弁護士へお気軽にご相談ください。