労災事故で後遺障害4級に認定された場合、労働者災害補償保険(労災保険)から次の3種類の給付を受け取れます。
- 障害補償等年金(給付基礎日額の213日分)
- 障害特別支給金(4級の場合は264万円)
- 障害特別年金(算定基礎日額の213日分)
ただ、労災保険からの給付は、あくまでも公的な補償であり、被災者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料や、将来の収入減(逸失利益)の全額は含まれていません。
会社に安全配慮義務違反などの法的な責任がある場合、労災保険とは別に会社に対して民事上の損害賠償を請求して、追加の賠償金を受け取ることができます。
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後遺障害4級の労災保険からの支給
後遺障害4級に認定されると、労災保険から年金を軸とした一定の補償が受けられます。具体的には以下の3つの給付金で構成されています。
障害補償等年金
障害補償等年金は、事故前の給与額をベースに計算される年金給付です。後遺障害4級の場合、給付基礎日額の213日分が毎年奇数月に分割して支給されます。
障害特別支給金
障害特別支給金は、被災労働者の社会復帰を支援するために支給される一時金です。
等級ごとに定額で定められており、後遺障害4級の場合は一律264万円が支給されます。これは年金ではなく、初回に一度だけまとめて受け取るものです。
障害特別年金
障害特別年金は、事故前1年間に支払われたボーナス(賞与)などの特別給与をベースに計算される年金です。後遺障害4級の場合、算定基礎日額の213日分が毎年支給されます。

労災保険からの実際の支給額の具体例
労災保険から実際に支給される金額を、給付基礎日額および算定基礎日額の2つのパターンで試算しました。
① 給付基礎日額が10,000円、算定基礎日額が2,000円の場合
| 給付の種類 | 金額 |
|---|---|
| 障害補償等年金 | 2,130,000円(毎年支給) |
| 障害特別支給金 | 2,640,000円(初回のみ) |
| 障害特別年金 | 426,000円(毎年支給) |
| 年間の受取額 | 2,556,000円(初回除く) |
② 給付基礎日額が15,000円、算定基礎日額が3,000円の場合
| 給付の種類 | 金額 |
|---|---|
| 障害補償等年金 | 3,195,000円(毎年支給) |
| 障害特別支給金 | 2,640,000円(初回のみ) |
| 障害特別年金 | 639,000円(毎年支給) |
| 年間の受取額 | 3,834,000円(初回除く) |
労災保険以外に請求できる金額
労災保険は被災した労働者の救済を目的とした制度ですが、労働者の全ての損害を補償してくれるわけではありません。
会社側に安全配慮義務違反(事故を防ぐための適切な安全対策を怠っていたなど)がある場合は、労災保険でカバーされない以下の損害を会社に対して請求できます。
入院や通院の慰謝料
労災事故によるけがのために、入院や通院を余儀なくされたことに対する精神的苦痛への補償です。
治療にかかった期間や実際の通院日数に応じて、裁判基準(弁護士基準)をもとに適切な金額を算出します。
後遺障害の慰謝料
後遺障害4級という障害が残ってしまったこと自体に対する精神的苦痛への補償です。
労災保険には慰謝料という項目が存在しないため、全額を会社(または会社の任意保険)に請求することになります。裁判基準(弁護士基準)における後遺障害4級の慰謝料相場は1,670万円となります。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害が残ったことにより労働能力が低下し、将来にわたって得られるはずだったのに失われてしまった収入(減収分)に対する補償です。
後遺障害4級の労働能力喪失率は92%となっており、事故前の年収や年齢(就労可能期間)をもとに計算するため、請求額は数千万円から1億円を超えるような場合もあります。
その他の損害
必要性が認められる場合の介護費用、通院交通費、将来の装具・車椅子の購入費用、車椅子生活に対応するための自宅や自動車の改造費用など、事故によって発生した実費や将来必要となる費用についても請求が可能です。

会社からの実際の支給額の具体例
会社に安全配慮義務違反があり、民事上の損害賠償を請求した場合の具体的な計算例をご紹介します。
① 視力障害のケース
年収600万円の45歳会社員が、工事現場での化学物質飛散事故等で目を負傷し、4ヶ月入院・8ヶ月通院し、両眼の視力が0.06以下となった場合です。
| 内訳 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料 | 2,480,000円(4ヶ月入院・8ヶ月通院) |
| 後遺障害慰謝料 | 16,700,000円(4級の裁判基準) |
| 逸失利益 | 87,971,688円(6,000,000円×92%× 15.9369 [22年分]) |
| 合計 | 107,151,688円 |
※逸失利益の計算は、45歳から67歳までの22年間(ライプニッツ係数15.9369)で算出しています。
※この総額から労災保険より受給した年金等の支給分が控除され、残額が会社へ追加請求する額となります。
② 上肢障害のケース
年収550万円の35歳会社員が、工場内での機械巻き込まれ事故により、片方の腕を肘関節以上で切断せざるを得なくなり、3ヶ月入院・9ヶ月通院し、1上肢を肘関節以上で失って後遺障害4級が認定された場合です。
| 内訳 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料 | 2,260,000円(3ヶ月入院・9ヶ月通院) |
| 後遺障害慰謝料 | 16,700,000円(4級の裁判基準) |
| 逸失利益 | 103,167,328円(5,500,000円×92%× 20.3888 [32年分]) |
| 合計 | 122,127,328円 |
※逸失利益の計算は、35歳から67歳までの32年間(ライプニッツ係数20.3888)で算出しています。
※この総額から労災保険より受給した年金等の支給分が控除され、残額が会社へ追加請求する額となります。
よくあるご質問
治療中ですが、いつ後遺障害申請をすればよい?
これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと医師が判断した状態(症状固定)になった後に申請を行います。
けがの程度にもよりますが、一般的には事故や治療開始から6ヶ月以上経過したタイミングが一つの目安となります。上位の等級が見込まれる場合には、1年から1年半程度経過したタイミングになることもあります。
労災保険から慰謝料は支払われる?
労災保険から慰謝料は一切支払われません。
労災保険は最低限の生活補償を目的とした公的保険であり、精神的苦痛に対する賠償である慰謝料の制度がないためです。慰謝料を受け取るためには、会社に対して民事上の損害賠償請求を行う必要があります。
給付基礎日額とは?
原則として、労災事故が発生した日の直前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた総額(ボーナスなどの特別に支払われた賃金を除く)を、その期間の総日数で割った1日当たりの金額です。
算定基礎日額とは?
労災事故が発生した日の前1年間に、その労働者が会社から受け取ったボーナス(賞与)などの特別給与の総額を365で割った1日当たりの金額です。
年金はいつからいつまでもらえる?
症状固定日の翌月分から支給が開始され、被災された労働者本人が亡くなるまで一生涯支給されます。
一度もらえた年金がもらえなくなることはある?
原則として生涯支給されますが、症状が大幅に改善し、後遺障害4級の基準を下回ったと判断された場合には、支給停止や減額(等級の変更)になることがあります。
仕事に復帰すると年金はもらえなくなる?
仕事に復帰しても、年金は変わらず支給され続けます。
労災の障害年金は「労働能力を失ったこと」に対する補償であり、復帰後の実際の収入によって支給が止められることはありません。
年金ではなく一時金としてもらえる?
「障害補償前払一時金」という制度を利用することで、将来受け取る年金の一部をまとまった一時金として先に受け取ることができます。
後遺障害4級の場合、上限を920日分として、200日分、400日分、600日分、800日分、920日分の5つの選択肢から選んで前払いを受けることが可能です。ただし、前払いを受けた分、その金額に達するまでその後の年金支給は停止されます。
年金受給中に亡くなった場合、遺族への補償は?
年金を受給している方が亡くなった時点で、それまでに受け取った年金の合計額が、後遺障害4級の補償限度である920日分に達していなかった場合、その差額が「障害補償差額一時金」として遺族に支給されます。
まとめ:まずは弁護士に相談
後遺障害4級は、今後の就労や日常生活に大きな支障をきたす重い障害です。労災保険から年金を受け取るだけでなく、会社に対して適切な損害賠償を請求できるか否かで、今後の生活を支える経済的基盤は数千万円単位で大きく変わります。
しかし、労災保険の給付と会社への賠償請求の調整(既給付の控除など)は非常に複雑で、個人で会社と対等に交渉するのは困難なことが多いです。
被災された方やご家族が適正な補償を受け、安心してこれからの生活を送るためにも、よつば総合法律事務所の弁護士へお気軽にご相談ください。