労災事故で後遺障害5級に認定された場合、労働者災害補償保険(労災保険)から次の3種類の給付を受け取れます。
- 障害補償等年金(給付基礎日額の184日分を毎年)
- 障害特別支給金(5級の場合は225万円)
- 障害特別年金(算定基礎日額の184日分を毎年)
ただ、労災保険からの給付は、あくまでも公的な補償であり、被災者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料や、将来の収入減(逸失利益)の全額は含まれていません。
会社に安全配慮義務違反などの法的な責任がある場合、労災保険とは別に会社に対して民事上の損害賠償を請求して、追加の賠償金を受け取れます。
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後遺障害5級の労災保険からの支給
労災事故による治療を続けた結果、これ以上症状の改善が見込めない「治癒」(症状固定)と判断された後に、体に重い後遺症が残った場合、労働基準監督署長に対して後遺障害の申請を行います。その結果、後遺障害5級に認定されると、次の給付が受けられます。
障害補償等年金
後遺障害が残ったことによる労働能力の喪失に対する基本的な補償給付です。
後遺障害5級の場合、給付基礎日額の184日分が、受給権者が亡くなるまで毎年定期的に支給されます。
障害特別支給金
後遺障害5級の場合、給付基礎日額に関係なく、一律で225万円が一度だけ支給されます。
障害特別年金
ボーナスなどの特別給与を基準に計算する補償です。
後遺障害5級の場合、算定基礎日額の184日分が毎年定期的に支給されます。

労災保険からの実際の支給額の具体例
① 給付基礎日額が10,000円、算定基礎日額が2,000円の場合
| 給付の種類 | 金額 |
|---|---|
| 障害補償等年金 | 1,840,000円(毎年支給) |
| 障害特別支給金 | 2,250,000円(初回のみ) |
| 障害特別年金 | 368,000円(毎年支給) |
| 年間の受取額(初回除く) | 2,208,000円(毎年支給) |
② 給付基礎日額が15,000円、算定基礎日額が3,000円の場合
| 給付の種類 | 金額 |
|---|---|
| 障害補償等年金 | 2,760,000円(毎年支給) |
| 障害特別支給金 | 2,250,000円(初回のみ) |
| 障害特別年金 | 552,000円(毎年支給) |
| 年間の受取額(初回除く) | 3,312,000円(毎年支給) |
労災保険以外に請求できる金額
会社に安全配慮義務違反(事故を防ぐ対策を怠った落ち度)等がある場合、被害者は会社に対して民事上の損害賠償を請求できます。
入院や通院の慰謝料
けがそのものによる肉体的・精神的苦痛への賠償です。たとえば、事故による重傷で4か月入院し、その後8か月通院(合計12か月)した場合、裁判所の基準(赤い本 別表I)での入通院慰謝料は248万円が相場です。
後遺障害の慰謝料
後遺障害5級という重大な後遺症が残ったこと自体に対する精神的苦痛への賠償です。後遺障害5級の場合、裁判所の基準は後遺障害慰謝料1,400万円が相場です。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害により将来にわたって減ってしまう収入の補償です。
後遺障害5級の労働能力喪失率は原則として79%とされています。ライプニッツ係数は、原則として67歳までの期間で計算します。
その他の損害
次のような損害を会社に請求できる可能性があります。
- 労災保険では全額カバーされない休業損害の差額
- 自宅の手すり設置や段差解消などの家屋改造費
- 介護用の車両への車両改造費
- 重度の後遺症に伴う将来の介護費用(必要な場合)
会社からの実際の支給額の具体例
① 高次脳機能障害(5級2号)のケース
年収600万円の45歳会社員が、頭部外傷による高次脳機能障害(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの)で4か月入院・8か月通院し、後遺障害5級2号が認定された場合の内訳です。
| 内訳 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料 | 2,480,000円(裁判基準・別表Ⅰ) |
| 後遺障害慰謝料 | 14,000,000円(5級の裁判基準) |
| 逸失利益 | 75,540,906円(6,000,000円 × 79% × 15.9369 [22年分]) |
| 合計 | 92,020,906円 |
② 視力障害(5級1号)のケース
年収550万円の35歳会社員が、工事現場の爆発事故等で目を負傷し、3か月入院・9か月通院し、片方の目が失明し、もう片方の目の視力も0.1以下となって、後遺障害5級1号が認定された場合の内訳です。
| 内訳 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料 | 2,260,000円(裁判基準・別表Ⅰ) |
| 後遺障害慰謝料 | 14,000,000円(5級の裁判基準) |
| 逸失利益 | 88,589,186円(5,500,000円 × 79% × 20.3888 [32年分]) |
| 合計 | 104,849,186円 |
※上記は損害の総額です。実際には、将来の減収(逸失利益)にあたる部分として労災保険から支給された金額の一部は、会社に請求できる金額から差し引いて計算します。

よくあるご質問
治療中ですが、いつ後遺障害申請をすればよい?
治療を継続してもこれ以上の症状の改善が見込めない「症状固定」の診断を受けてから申請を行います。
5級に該当するような重傷のケース(高次脳機能障害や重度の身体障害など)では、事故から1年〜1年6か月程度が経過したタイミングが一般的な目安となります。
労災保険から慰謝料は支払われる?
労災保険から慰謝料は支払われません。
労災保険は最低限の治療費や減収の補償を行う公的制度であり、精神的苦痛に対する賠償である「慰謝料」の項目が存在しないためです。
会社に安全配慮義務違反などの法的責任がある場合に限り、会社に対して損害賠償請求を行うことで獲得できます。
給付基礎日額とは?
原則として、事故が発生した日の直前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った「1日あたりの平均賃金」のことです。年金額や一時金を算出する際のベースとなる重要な数値です。
算定基礎日額とは?
事故発生日以前1年間に事業主から支払われた、ボーナス(賞与)などの「特別給与」の総額を365で割った1日あたりの金額です。この数値を基に「障害特別年金」が計算されます。
年金はいつからいつまでもらえる?
原則として、症状固定(治癒)が認められた日の翌月から支給が開始され、受給権者が亡くなるまで生涯にわたって支給されます。
支払いは偶数月の年 6 回、それぞれの前月までの2か月分がまとめて口座に振り込まれます。
一度もらえた年金がもらえなくなることはある?
時間の経過に伴う治療やリハビリによって「症状が劇的に改善し、障害等級の基準に該当しなくなった」と判断された場合、受給権が消滅したり減額されたりします。
労災保険では定期的に「障害の状態報告書」の提出や診察が求められ、そこで症状の軽減(等級の引き下げや該当外)があったとみなされると、支給の停止や一時金への切り替えが行われることがあります。
仕事に復帰すると年金はもらえなくなる?
いいえ、仕事に復帰しても年金は受給し続けることができます。
労災の障害年金は「その重度の後遺症が残ってしまったこと自体」に対して支給されるものであり、現在の就労状況や収入の有無によって支給が停止されることはありません。
年金ではなく一時金としてもらえる?
5級の場合は、将来受け取る予定の年金の一部をまとめて先に受け取れる「障害年金前払一時金」という制度を利用できます。
5級の場合、前払一時金の額は、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、790日分の4種類から選択できます。ただし、前払いを受けた額に達するまで、その後の月々の年金支給は停止されます。
年金受給中に亡くなった場合、遺族への補償は?
年金受給者が亡くなった時点で、それまでに支払われた年金の合計額が「一時金換算額(5級の場合は790日分)」に満たない場合に限り、その差額が遺族に対して「障害補償等年金差額一時金」および「障害特別年金差額一時金」の2種類として一括支給されます。
高次脳機能障害で、5級、7級、9級の違いは?
脳の損傷による認知障害や行動障害(高次脳機能障害)は、その「就労可能な範囲(労働能力の制限の程度)」によって等級が大きく分かれます。
まとめ:まずは弁護士に相談
後遺障害5級は、労働能力の79%を喪失するとされる極めて重大な障害であり、会社への損害賠償請求額が1億円を超えるケースも少なくありません。
しかし、会社側や保険会社との交渉、労災年金との相殺計算には高度な専門知識が必要です。適正な賠償金を受け取り、将来の生活を守るために、ぜひ一度よつば総合法律事務所の無料相談をご活用ください。