アスベスト被害による労災事故にはどのような特徴・注意点がありますか?

アスベスト(石綿)被害による労災事故の最大の特徴は、「潜伏期間が極めて長い(15年~50年)」ことと、「原因企業が倒産していたり、資料が残っていなかったりしても救済の可能性がある」という点です。

一方で、時効の壁や複雑な認定基準があるため、医学的・法的な専門知識に基づく申請が重要です。また、単なる労災申請だけでなく、国への給付金請求や企業への賠償請求など、複数のルートを検討する必要がある点にも注意が必要です。

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アスベスト健康被害と労災保険

アスベスト健康被害は労災保険の対象となる可能性

アスベスト(石綿)は、耐熱性、絶縁性、耐摩耗性に優れていたため、かつては「魔法の鉱物」と呼ばれ、建設資材や工業製品、自動車部品など、身近なあらゆる場面で広く使用されていました。

しかし、アスベストはその微細な繊維を吸い込むことで肺の組織に深く刺さり、数十年後に深刻な健康被害を引き起こします。これらは仕事が原因で発症した職業病とみなされ、労災保険の対象となります。主な対象疾患は以下のとおりです。

① 中皮腫
肺を取り囲む胸膜や、お腹の中の臓器を覆う腹膜などにできる悪性腫瘍です。アスベスト特有の疾患と言われ、極めて予後(治療後の経過や病状の見通し)が厳しいことで知られています。
② 肺がん
アスベスト曝露により発症リスクが劇的に高まります。特に喫煙習慣がある場合、アスベストとの相乗効果で発症率は数十倍になるともいわれています。
③ 石綿肺
肺が線維化して硬くなる、アスベスト特有のじん肺です。進行すると呼吸困難を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたします。
④ びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水
肺を覆う膜が厚くなったり(肥厚)、炎症によって胸に水が溜まったり(胸水)する状態です。これらも一定の基準を満たせば労災として認められます。

労災保険の対象となる要件

労災として認定されるには、労働基準監督署によって業務と病気の間の因果関係が認められる必要があります。

アスベスト事案では、発症までの数十年という長い空白期間(潜伏期間)を証明するため、以下の3点が重要視されます。

① 石綿曝露業務の経歴

アスベストを直接扱う作業(吹付け、切断等)のほか、それらが舞っている環境下での周辺作業も含まれます。

従事期間については疾患ごとに基準があり、たとえば中皮腫の場合は「1年以上の曝露」が目安となります。

② 潜伏期間

最初に曝露してから発症するまでに、医学的に妥当な期間が経過していることが必要です。

中皮腫や肺がんの場合、通常20年~40年といった長い月日を経て発症するため、現在の病状から逆算して過去の職歴を特定することが求められます。

③ 医学的所見

これが最も重要なポイントです。医師による診断書だけでなく、レントゲンやCT画像で「胸膜プラーク(石綿を吸った痕跡)」が確認できるか、あるいは手術等の際の肺組織検査で一定量のアスベスト繊維が認められるかなどの客観的な事情が精査されます。

労災保険の給付内容

労災認定を受けると、一般的な健康保険よりも手厚い補償が受けられます。労働者が仕事によって受けた損害を、社会全体や事業主の責任としてカバーするという考え方に基づいているためです。

具体的には、次のような補償があります。

① 療養補償給付
治療費、入院費、手術代、薬剤費などの全額が支給されます。窓口での自己負担はなくなり、継続的な治療が必要な被害者にとって大きな支えとなります。
② 休業補償給付
療養のため働けない期間中、平均賃金の約80%(特別支給金を含む)が支給されます。これにより、収入が途絶える不安を軽減し、治療に専念できる環境が整います。
③ 障害補償給付
治療を続けてもこれ以上の改善が見込めない、症状固定の状態に至った際、肺機能の低下などの障害が残った場合に、その程度(等級)に応じて年金または一時金が支給されます。
④ 遺族補償給付
不幸にも労働者が亡くなられた場合、ご遺族の人数や年齢に応じて「遺族補償年金」や「遺族補償一時金」が支給されるほか、葬儀費用を補助する「葬祭料」も支払われます。

労災保険以外の補償

アスベスト問題は、労災保険だけでは解決しないケースも多々あります。状況に応じて、以下の制度を組み合わせて検討することが必要です。

石綿健康被害救済制度

「時効で労災請求権を失った遺族」や「建設現場周辺の住民としてアスベストを吸い込んでしまった方」、「アスベスト工場の従業員の家族(持ち帰った作業着に付着していた粉塵を吸った等)」など、労災保険の枠組みでは救済されない方を幅広く救済するための制度です。

独立行政法人環境再生保全機構が運用しており、療養手当や葬祭料が給付されます。

建設アスベスト被害救済制度

建築現場で働き、アスベスト被害に遭った労働者や一人親方を救済するための制度が「建設アスベスト給付金制度」です。

過去、多くの建設労働者が国を相手に裁判を起こしてきましたが、この制度の創設により、一定の要件を満たせば裁判を経ることなく、最大1,300万円の給付金を国から受け取ることが可能になりました。

対象となる現場の範囲や期間が細かく定められているため、専門家によるチェックが大切です。

会社への損害賠償請求

国からの給付金とは別に、勤務先の企業が適切な安全対策(マスクの支給や換気装置の設置など)を怠っていた場合、企業に対して安全配慮義務違反等に基づく損害賠償を請求できる可能性があります。

これは「慰謝料」などの名目で、給付金だけでは補いきれない損害を補填するために必要な手段です。

よくあるご質問

具体的な証拠(当時の給与明細や日報)がなくても認定される?

可能性はあります。数十年も前の書類が残っているケースは稀です。

弁護士が年金加入記録を精査したり、当時の現場写真や同僚の証言を集めたりすることで、職歴を証明できる場合があります。

一人親方で働いていた場合、対象になる?

通常の労災保険については、当時に特別加入という制度を利用していたかどうかがポイントになります。

建設アスベスト給付金制度については、労働者(雇用されていた人)だけでなく、個人事業主である「一人親方」や「中小事業主」も救済の対象となっています。

もし労災が使えない場合でも、建設アスベスト給付金制度や石綿救済法によってカバーできる可能性があります。

建設業以外の業種(工場や造船所など)でも請求できる?

石綿製品の製造、造船、鉄道車両の整備、自動車のブレーキ交換、ボイラー修理など、アスベストを扱っていたあらゆる業種に救済の可能性があります。

石綿による病気かどうか判断する特別な検査はある?

通常のレントゲン検査だけでは見落とされる可能性があるため、高分解能CT(HRCT)による精密な画像診断が推奨されます。

また、医学的な確証を得るために、胸腔鏡検査等で採取した肺の組織や、肺を洗った液(気管支肺胞洗浄液)を調べ、石綿小体や石綿繊維の数をカウントする検査が行われることもあります。

これらの検査結果は認定を左右する証拠となります。

肺がんと診断された喫煙者でも、アスベストの影響と言える?

喫煙歴があっても、肺の画像からアスベスト吸入の形跡(プラーク等)が見つかれば、労災と認定される余地があります。

喫煙者がアスベストを吸い込んだ場合、非喫煙者よりも肺がんの発症リスクが跳ね上がることが医学的に証明されています。

アスベスト被害の請求には時効や期限はある?

あります。労災保険は通常2年~5年、建設給付金は20年といった期限があります。

しかし、制度によって起算点が異なるため、期限が過ぎていると思われても、まずは弁護士にご相談ください。

家族が数年前に亡くなった場合、今からでも請求できる?

可能です。ご遺族が代わって請求を行う権利があります。

亡くなられた原因がアスベストに関連するものであれば、遡って救済を受けられる道が残されています。

まずは弁護士に無料相談

アスベスト被害の救済手続きは、高度な医学的知見と法的な知見を必要とします。よつば総合法律事務所では、被害に遭われた方やご遺族の負担を最小限に抑え、適切な補償を勝ち取るためのサポートを行っています。

将来への不安、過去の職歴に関する疑問など、お気軽にご相談ください。労働災害に詳しい弁護士が対応させていただきます。