通勤中の交通事故でけがをした場合、まずは労災保険の利用を検討すべきです。
労災保険は、被害者側に過失があっても減額されることなく、治療費や休業補償などの補償が受けられるため、多くのケースで有利な選択肢となります。
その上で、労災保険で補償されない損害(慰謝料など)は、加害者の自賠責保険や任意保険などへの請求を検討します。
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通勤中の事故で使える可能性がある保険
通勤中に交通事故にあった場合、被害者は様々な保険制度を利用できます。
具体的には、労災保険・健康保険・自賠責保険・任意保険の4種類が主な選択肢です。
これらの保険はそれぞれ目的や補償範囲が異なり、利用する際のメリット・デメリットも大きく異なります。
① 労災保険
労災保険は、正式には労働者災害補償保険といいます。労働者が業務中や通勤中にけがや病気になった場合、後遺障害が残った場合、あるいは死亡した場合などに、労働者やその遺族を保護するために国が設けている公的な保険制度です。
通勤中の事故によるけがは「通勤災害」として労災保険の給付対象となりえます。
労災保険のメリットとデメリットは次のとおりです。
労災保険のメリット
休業4日目以降、給付基礎日額の80%(休業給付60%+休業特別支給金20%)が支給されます。
※給付基礎日額:原則として、事故発生日直前3か月間の賃金総額を、その期間の暦日数で割った1日あたりの賃金額
労災保険のデメリット
② 健康保険
健康保険は、日常的な病気やけがの治療に利用する公的な医療保険です。ただし、労働災害(業務災害・通勤災害)の場合、原則として健康保険は利用できません。
一般的な健康保険の利用のメリットとデメリットは次のとおりです。
健康保険のメリット
健康保険のデメリット
③ 自賠責保険
自賠責保険は、正式には自動車損害賠償責任保険といいます。これは、自動車やバイクの所有者に加入が義務付けられている強制保険です。交通事故でけがをした被害者を救済することを目的としています。
自賠責保険のメリットとデメリットは次のとおりです。
自賠責保険のメリット
自賠責保険のデメリット
④ 任意保険
任意保険は、自賠責保険の補償だけでは不足する場合に備えて、多くのドライバーが任意で加入している保険です。
任意保険のメリットとデメリットは次のとおりです。
任意保険のメリット
任意保険のデメリット
優先的に利用を検討すべき保険
通勤中の事故でけがをした場合、最初にどの保険を利用するかは非常に重要です。
適切な選択をしないと、受け取れる補償額が減ってしまったり、手続きが煩雑になったりする可能性があります。
ここでは、ケースごとの最適な選択肢について、弁護士の目線から解説します。
労災保険の利用をまずは検討
加害者側の保険(自賠責保険・任意保険)と労災保険が両方使える場合、まずは労災保険の利用をおすすめします。その最大の理由は、労災保険には過失相殺の概念がないからです。
たとえば、被害者にも20%の過失があったとします。この場合、加害者側の保険では、治療費や休業損害などが原則20%減額されてしまいます。
しかし、労災保険を使えば、治療費や休業補償は減額されることがありません。
自賠責保険の枠を温存できる可能性
さらに、労災保険を利用することで、加害者側の自賠責保険の枠を温存できる場合があります。
自賠責保険には120万円という傷害部分の上限があります。労災保険で治療費や休業補償をまかなえば、自賠責保険の120万円の枠を、入通院慰謝料などの補償に充てられます。その結果、より多くの補償を受けられる可能性が高まります。
任意保険の利用も並行して検討
労災保険は、慰謝料を補償しないという大きな弱点があります。
慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償であり、交通事故の損害賠償で重要な要素です。この慰謝料を請求するには、加害者の自賠責保険や任意保険に請求する必要があります。
また、労災保険では全額支給されなかった休業損害の差額を加害者の任意保険に請求することも可能です。
このように、労災保険を利用したとしても、並行して任意保険の利用を考えることが大切です。
個別事例ごとの検討が必要
労災保険を利用できる場合、基本的には労災保険の利用を優先するのが望ましいですが、個々のケースに応じた検討が必要です。
ケース1:被害者に過失がない事故
被害者に過失が全くない(過失割合100:0)の場合、労災保険と加害者側の自動車保険(自賠責保険・任意保険)のどちらを利用しても、受け取れる金額に大きな差はないように思えます。
しかし、それでも労災保険の利用は検討すべきです。
たとえば、相手方が任意保険に加入していないような場合、自賠責保険の上限(120万円)を超える損害は、基本的に加害者本人に直接請求しなければならず、回収が困難になるリスクがあります。
労災保険を使えば加害者の資力に関係なく、一定程度の補償が受けられます。
また、加害者との示談交渉がスムーズに進まなかったり、任意保険会社との交渉が難航したりする場合でも、労災保険を利用すれば、まずは治療費や休業補償が確実に受け取れることがあります。
ケース2:被害者にも過失がありそうな事故
被害者にも過失が認められる場合(過失割合が70:30など)は、労災保険の利用を優先すべき場合が多いです。
この場合、加害者側の保険を利用すると、過失割合に応じて損害賠償額が一定程度減額されてしまうためです。
ケース3:加害者が無保険の事故
加害者が自賠責保険にも任意保険にも加入していなかった場合、労災保険の利用はほぼ唯一の選択肢です。
この場合、労災保険で治療費や休業補償をまかない、労災保険で補償されない慰謝料などを含む損害について、政府の保障事業に請求する方法があります。
政府保障事業は、加害者のひき逃げによって被害者が補償を受けられない場合や、加害者が自賠責保険に加入していない場合に、自賠責保険に相当する最低限の補償を目的とした制度です。
給付については二重に受け取ることはできず、労災保険との調整が行われるため、まずは労災保険を利用した上で、足りない部分を政府保障事業に請求するのが一般的です。
ケース4:自損事故(加害者のいない事故)
通勤中に電柱にぶつかるなど、他人にけがをさせたのではなく、自分だけがけがをした自損事故の場合、自賠責保険や相手方の任意保険は利用できません。
この場合、利用できるのは労災保険、そして被害者の加入している任意保険(人身傷害保険など)に限られます。
通勤災害として労災保険の申請を行うことで、治療費や休業補償を受けることができます。また、自分の任意保険に人身傷害保険が付帯していれば、この保険を利用して補償を受けることも可能です。
まとめ:迷ったらまずは弁護士に相談
通勤中の事故でけがをした場合、労災保険、健康保険、自賠責保険、任意保険という複数の選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
どのような保険をどのように利用するのが有利かは、事故の状況、けがの程度、過失割合など、個々のケースによって異なります。
通勤中の事故でお困りの方は、労働災害や交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。