労災の遺族年金はいつまでいくらもらえますか?また、慰謝料などを会社に請求できる可能性はありますか?

労災事故で労働者が亡くなられた場合、残されたご遺族は労災保険から遺族補償等年金などの給付を受け取ることができます。

もらえる金額は遺族の人数に応じて給付基礎日額の153日分〜245日分、受け取れる期間は受給権者(最優先順位の遺族)の要件を満たしている間(配偶者の場合は原則として生涯)となります。

また、労災保険から給付される年金には、ご遺族の精神的苦痛に対する慰謝料や、将来得られるはずだった収入の全額(逸失利益)は含まれていません。

事故の発生について会社側に安全配慮義務違反などの法的責任がある場合、労災保険とは別に会社に対して民事上の損害賠償を請求して、追加の慰謝料や補償金を受け取れる可能性があります。

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遺族年金を受け取れる人

労災保険における遺族補償等年金(通勤災害の場合は遺族年金)は、業務中や通勤途中の事故、あるいは業務に起因する病気や過労(過労死・過労自殺など)によって労働者が亡くなられた際、残されたご遺族の生活を継続的に支えるために支給される公的な年金給付です。

遺族年金を受給するためには、亡くなった労働者の死亡当時、その方の収入によって生計を維持していたこと(生計維持要件)が必要です。ここでいう生計維持とは、専業主婦のように全面的に養われていた場合に限られず、共働きであって労働者の収入によって生活費の一部が賄われていた場合や、仕送りを受けていた場合なども広く含まれます。

ただし、生計を維持していた遺族であれば誰でも均等に年金を受け取れるわけではありません。法律によってあらかじめ受給権者となる順位が定められており、最も順位が高い遺族1名のみが代表して受給権者となります。

また、配偶者以外の遺族については、労働者の死亡時において一定の年齢要件や障害要件を満たしている必要があります。

順位 ご遺族 支給要件
1 妻・夫 妻:年齢制限なし(37歳未満で子のない妻は原則5年間の有期年金)夫:55歳以上(原則60歳支給開始)、または一定の障害があること
2 18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にあること(高校卒業まで)、または一定の障害があること
3 父母 55歳以上(原則60歳支給開始)、または一定の障害があること
4 18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にあること、または一定の障害があること
5 祖父母 55歳以上(原則60歳支給開始)、または一定の障害があること
6 兄弟姉妹 18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にあるか、55歳以上(原則60歳支給開始)、または一定の障害があること

※婚姻届を提出していない戸籍上の婚姻関係がない場合であっても、死亡当時、事実上婚姻関係と同様の事情にあった内縁関係(事実婚)の配偶者は、法律上の配偶者と同等に最優先で扱われます。

※夫・父母・祖父母・兄弟姉妹の55歳以上という要件について、実際の年金支給が開始されるのは原則として60歳になってからとなります(55歳〜60歳までは支給停止期間となります)。なお、死亡時に55歳未満であった場合は、原則として受給資格を得られません。

遺族年金でもらえる金額

労災事故によって労働者が死亡した場合、労災保険からご遺族に対して支給される給付金は、単一の年金だけではありません。主に以下の3つの給付と葬祭料が組み合わされて支給されます。

① 遺族補償等年金

事故前の給与額をベースとする給付基礎日額に、生計維持遺族の人数に応じた日数(153日分〜245日分)を掛け合わせた金額が、奇数月に年6回分割で支給されます。

年間で受け取れる年金総額を決定する給付日数は、亡くなった労働者によって生計を維持していた遺族の総人数(受給権者+受給権者と生計を同じくしている受給資格者)に応じて、次のように段階的に増額されます。

遺族の人数 支給となる給付基礎日額の日数
1人 153日分
2人 201日分
3人 223日分
4人以上 245日分
  • 給付基礎日額とは、事故前3か月間に支払われた賃金総額を日数で割った1日あたりの賃金額のことです。
  • 受給権者に対し遺族の数に応じて遺族特別年金が支給されます。
  • 遺族の数に関係なく一時金として遺族特別支給金300万円が支給されます。
  • 遺族の1人、かつ、55歳以上の妻または一定の障害状態の妻の場合、支給日数は153日分ではなく175日分となります。

② 遺族特別支給金

業務災害による死亡に対して、遺族の社会復帰や生活立直りを支援する福祉的観点から支給される定額の一時金です。受給権者に一律300万円が初回に一度だけ支給されます。

③ 遺族特別年金

事故前1年間に労働者が支給されていたボーナス(賞与)などの特別給与をベースとする算定基礎日額に、同様の日数(153日分〜245日分)を掛け合わせた金額が毎年支給されます。

④ 葬祭料・葬祭給付

葬儀を行ったご遺族等に対して、「315,000円+給付基礎日額の30日分」または「給付基礎日額の60日分」のいずれか高い方の金額が支給されます。

遺族年金はいつまでもらえる?

労災の遺族補償等年金は、原則として受給権を得たご遺族が受給資格を失う事由(失権事由)に該当しない限り、亡くなるまで一生涯支給が継続されます。

一般的な公的年金のように〇歳になったら終了という年齢上限は、妻が受給権者の場合には存在しません。

ただし、法律上定められた以下の失権事由のいずれかに該当した場合には、その時点で遺族年金の受給権が消滅し、支給が停止されます。

  1. 受給権者(ご遺族本人)が死亡したとき
  2. 受給権者が婚姻(再婚)したとき(※届出を出していない事実婚・内縁関係を含みます)
  3. 直系血族または直系姻族以外の者の養子となったとき
  4. 離縁によって、亡くなった労働者との親族関係が終了したとき
  5. 子・孫・兄弟姉妹が18歳に達した日以降の最初の3月31日(高校卒業相当)を迎えたとき(※障害がある場合を除く)
  6. 障害を理由として受給権を得ていた者が、その障害状態に該当しなくなったとき
  7. 37歳未満で夫の死亡時に子のない妻が、年金受給開始から5年を経過したとき

最優先順位の受給権者が再婚や死亡などによって受給権を失った場合、後順位の遺族(例えば、妻が再婚した際に残された子どもなど)が受給要件(当時生計を同じくしていたこと、年齢・障害要件など)を満たしていれば、受給権がその遺族へと移転します。これを転給と呼びます。

転給が行われることで、残された子どもなどが引き続き遺族年金を受け取ることが可能となります。

労災保険以外から受け取れる可能性

被災労働者が亡くなられた場合、労災保険から支給される遺族年金は、ご遺族の生活を維持するための大きな支えとなります。しかし、労災保険からの給付だけでは、労働者が亡くなったことによる損害のすべてが補償されたことにはなりません。

会社に請求ができる場合

労災事故が発生した原因について、会社(使用者)側に以下のような法的責任が認められる場合、ご遺族は労災保険とは別に、会社に対して民事上の損害賠償を直接請求することができます。

安全配慮義務違反

会社が機械の安全装置を設置していなかった、転落防止の設備を怠っていた、危険な作業に対する安全教育を行っていなかった、あるいは過酷な長時間労働やパワーハラスメントを放置して労働者を死に追いやったなど、会社が安全・健康への配慮を怠っていた場合です。(労働契約法5条

使用者責任

現場の現場監督や同僚など、他の従業員の過失や不注意な操作によって事故が発生し、労働者が死亡した場合、会社は使用者として損害賠償責任を負います。(民法715条

土地工作物責任

工場の建物の老朽化や設備の欠陥などが原因で崩落や事故が起き、労働者が死亡した場合に会社が負う責任です。(民法717条

会社に請求できる内容

会社に安全配慮義務違反などの責任がある場合、ご遺族が会社に対して請求できる主な損害項目は以下の通りです。

項目 内容と金額の相場・労災保険との違い
死亡慰謝料 労働者が死亡したことによる精神的苦痛に対する賠償です。労災保険には慰謝料という給付項目がありません。裁判基準では、亡くなった方が一家の支柱であった場合は2800万円前後、母親や配偶者の場合は2400万円前後、その他の場合(独身者等)は2000万円〜2200万円前後が相場となります。
逸失利益 労働者が生きていれば将来得られるはずだった生涯収入から、本人の生活費(30%〜50%程度)を控除し、ライプニッツ係数(中間利息控除)を用いて現時点の価値に換算した金額です。年収や年齢によっては数千万円から1億円以上の金額になるケースもあります。
葬儀費用 実際に葬儀にかかった費用について、裁判基準の150万円程度を上限の目安として会社に請求できます。

よくあるご質問

遺族年金を受給中に再婚した場合、支給はストップする?

遺族年金を受給しているご遺族が再婚(法律上の婚姻だけでなく事実婚・内縁関係を含む)した場合、その時点で受給権は消滅し、支給はストップします。法律上、再婚によって新たな配偶者との間に扶養関係・生計維持関係が発生するためです。

なお、受給権者であった妻が再婚して受給権を失った際、亡くなった労働者の子どもが18歳未満(高校修了前)であれば、受給権が子どもへ移転(転給)し、子どもに対して遺族年金の支給が継続されることになります。

遺族年金が支給されても、別途会社に対して慰謝料や損害賠償を請求できる?

会社側に安全配慮義務違反や不法行為責任があれば、労災保険の受給とは別に、会社へ民事上の損害賠償を請求できます。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

ご家族が労災事故によって突然命を奪われた際、残されたご遺族が受ける悲しみや戸惑い、そして今後の生活に対する不安は言葉に尽くせません。

事故現場の安全対策に不備があったのではないか、過酷な労働環境やハラスメントが放置されていたのではないかなど、会社側に不審な点や落ち度が疑われる場合は、労災保険の手続きだけでなく、会社への損害賠償請求の可能性について弁護士へ相談されることをおすすめします。